ご相談内容
はじめまして、棒高跳をしています。
中学時代、近畿ブロックでも3本の指に入るベスト記録を保持し、全国大会に出場できる機会をいただきました。
その全国大会の前日の調整から、急に踏み切ることができなくなりました。
急に跳ぶことが怖くなったのです。結局、その全国大会は散々な結果となりました。
もう一つ、全国大会の前にあった近畿大会で、「勝って当たり前」という大きな重圧の中で5位と大敗してしまったのが原因なのかもしれません。
ただ、怖さには物理的な怖さも含まれているのは確かです。棒が折れたら・・・、風に返されたら・・・。
これはイップスなのでしょうか?陸上競技でイップスになった人をあまり聞いたことがありません。どうすればいいでしょうか。
お答え
ぶるぶるさん、はじめまして。
ご相談ありがとうございます。
ぶるぶるさんは棒高跳びで全国大会に出場されるほど、高い実力をお持ちなのですね。
そこには並々ならぬ努力があったのだと感じられます。
それだけに、全国大会で思うような結果が出せなかったことで悔しい思いをされたのではないでしょうか。
また、跳ぶことへの不安、恐怖心が生まれてしまう現状もお辛いですよね。
本来のパフォーマンスを発揮できないもどかしさだけでなく、きっと棒高跳びに取り組むことにすらネガティブな気持ちになってしまっているのではないでしょうか。
まず、ぶるぶるさんの身に起こっているものがイップスなのか?というご質問に対しまして、実際に状況を拝見したわけではありませんので判断はできませんが、文面からの判断ですと、イップスの症状に近いようにも思われます。
「陸上競技でイップスになった人をあまり聞いたことがない」とのことですが、イップスは競技人口や競技の特徴によってばらつきはあるものの、あらゆるスポーツにおいて起こり得るものです。
また陸上におきましても、「短距離選手がスタートで走り出せない」「ハードルが怖い」などのイップス症状のお悩みを抱えている方もいらっしゃいます。
イップスは心理的な「これまでできていた運動動作が心理的原因でできなくなるもの」ですので、今のぶるぶるさんのお悩みも、もしかするとイップスに当てはまるものかもしれません。
そして、なぜそのようになったかという点につきまして、ご自身でも思われる、「勝って当たり前」という大きな重圧の中で大敗してしまったというご経験も関わっていると考えられます。
「勝って当たり前」という思考の裏には、「もし負けたら恥ずかしい」などのような不安や恐怖につながる思考が含まれています。
ご自身で大きな重圧であったと感じられているように、その試合に臨むぶるぶるさんの心中は、不安や恐怖でいっぱいだったのではないでしょうか。
そして、実際に5位という結果に終わってしまったことに対して、非常にショックを受けられたのではないでしょうか。
全国大会の前日から急に踏み切れなくなったことは、「またあの時の辛い思いをしたくない」という無意識の心、身体からのサインではないかと思われます。
そしてさらに、「棒が折れたら・・・、風に返されたら・・・。」という物理的な怖さにまで発展していることは、心や頭の中で予期不安が膨らみ、抑えが効かなくなってしまっている状態ではないかと思われます。
過去に大きな失敗をした経験やショックを受けた経験などから、人はまだ起きていないことにも関わらず、最悪の事態を想像してしまいます。それを予期不安といいます。
「また負けてしまうかもしれない」という恐怖や「もし負けてしまったら…」という不安はあって当然ではありますが、あまりに予期不安が大きくなりすぎ、捉われてしまいますと、抑えきれない大きな緊張を生み出してしまいます。
そしてそれはプレーへの支障となり、思い描いていた最悪の事態が現実のものとなってしまいやすくなります。
現状を乗り越えるために、まずはこの予期不安を手放すことが必要ではないかと思われます。
そして、そのためには思い通りにいかないことや過去の失敗、負けてしまう可能性も「受け容れる」ことが必要ではないかと思います。
受け容れることは勇気が必要なことであり、簡単には受け容れられない程に辛く悲しい経験ではあったかもしれませんが、それはあくまで過去であり、この先の試合でまた起きることとは限りません。
勝ち負けや完璧なパフォーマンスばかりにこだわり過ぎると、「勝たなくてはいけない」「失敗してはいけない」という思いが強く働きます。
「〜しなければいけない」という考え方ではなく、「〜しよう」「〜してみたい」のような、なりたい自分の姿を思い描けると力が抜けて少し楽にプレーできるようになるかもしれませんね。
またそのためには、心に余裕を持てる状態であることが大切です。
現状のお悩みについて、身近な方などへはご相談されていまか?辛い思い、苦しい思いは吐き出すことで軽減される場合がございます。
もし身近で頼れるような人がいらっしゃらない場合には、一度当所へもお越しになられてみてください。
ぶるぶるさんの現状を乗り越えるお力になれれば幸いです。